ALPS処理水の「海洋放出」に反対します 政府へ意見書を提出

経済産業大臣 西村康稔 殿
水産庁長官 森健 殿

漁業者や消費者の不安を拭えないALPS処理水の海洋放出に断固反対します

生活協同組合パルシステム埼玉
代表理事 理事長 樋口民子


 私たちパルシステム埼玉は「心豊かなくらしと共生の社会を創ります」を理念に埼玉県で活動する生活協同組合です。東京電力福島第一原子力発電所の事故を教訓として2012年にパルシステムグループで「エネルギー政策」を制定するなど、持続可能な社会の実現を目指して活動しています。これまでも利用者にとどまらないさまざまなつながりを通じ、省エネルギーの呼びかけや資源循環型事業モデルの開発、原子力発電に頼らない再生可能エネルギーの利用推進などに取り組んでまいりました。

 東京電力は6月26日、福島第一原子力発電所に溜まるALPS処理水を薄めて海洋放出するための設備等について、放出のための工事が完了したと発表しました。これを受け原子力規制委員会は7月7日、検査終了証を交付し放出を認めました。また、IAEA(国際原子力機関)も7月4日に「国際的な安全基準に合致している」「人と環境に対し無視できるほどの放射線影響」など評価する報告書を公表しています。
 上記の通り政府ならびに東京電力はALPS処理水の放出開始に向けた準備を進めています。しかし、現状では海洋放出の決定を下すにはあまりにも協議が不十分と言わざるを得ません。2021年4月13日に決定した「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針(以下「基本方針」という)」を見直し、ALPS処理水の海洋放出について再検討することを強く求めます。

 全国漁業協同組合連合会6月22日に開催した通常総会で「ALPS処理水海洋放出の方針に対する特別議決」を採択しました。「ALPS処理水の海洋放出には反対であることはいささかも変わることではない」「漁業者の長期に亘る不安を取り除くことはできない」と明確に反対する姿勢が表明されています。

パルシステム埼玉をはじめとするパルシステムグループでは、東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、 国よりも厳しい独自基準で放射能検査を実施し現在も継続しています。3.11 以後、福島県産の出荷量や卸値が下降する状況に反し、パルシステムは放射能の測定結果をお知らせして、積極的に福島の商品を扱い、地域の復興を後押ししてきました。

 今回実施されようとしているトリチウムが除去できない状態での海洋放出は、どれだけ希釈しても現存するトリチウムをそのまま海に捨てる行為であることに変わりなく、環境影響への不安を拭うことはできません。これには、周辺諸国も同様の懸念を抱いています。

 基本方針では、海洋放出に当たっての対応の方向性について「国民・国際社会の理解醸成に向けた取組に万全を期す必要がある」と記されています。現在の状況を鑑みれば、そのような状況に至っていないのは明らかです。このまま海洋放出が決定されれば、漁業者、消費者の不安を増長させるだけでなく、懸念されている長期的な風評被害を引き起こすことにもつながります。漁業者、消費者はいつまでも被害者になってしまうのです。

 早ければ今月末にも始まる見通しと報道されましたが、以上を踏まえ、漁業者や消費者の不安を取り除くことができないALPS処理水の海洋放出の決定に断固として反対します。

以上

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