ALPS処理水海洋放出への意見書

「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画の変更認可申請
(ALPS処理水の海洋放出関連設備の設置等)に係る 審査書案」に対する意見書

 

生活協同組合パルシステム埼玉
代表理事 理事長 樋口民子

 

 私たち生活協同組合パルシステム埼玉は「心豊かなくらしと共生の社会を創ります」を基本理念として埼玉県で活動している生活協同組合です。

 私たちのグループ生協事業エリア内で発生した東京電力福島第一原子力発電所(以後、福島第一原発)事故では、膨大な面積にわたるくらしや生業の場が放射性物質により汚染され、最大で16 万人以上がふるさとを離れて避難することを余儀なくされ、被災地の内外でさまざまな社会的分断も生まれるなど、多くの人々の生活に甚大な影響が及んでいます。そして、11年経過した現時点でも福島第一原発事故に関わる「原子力緊急事態宣言」は発動されたままとなっています。

 私たちは、省エネルギーの推進「減らす」、脱原子力発電「止める」、再生可能エネルギーへの転換「切り替える」を柱としたエネルギー政策を定め、その取り組みを通じて原子力発電に頼らない再生可能エネルギーの拡大や資源循環型の社会システムづくりを目指しています。豊かな海や海洋資源を次世代に引き継ぐためにも、これ以上、原発の事故と放射能汚染の被害を拡散させ、多くの方の生活を奪い環境破壊につながる処理水の海洋放出に強く反対します。

 

1.放射線影響評価の結果に不安が残ります。
ALPS処理水が海洋中に放出された場合、①人への放射線影響、②潜在被ばくによる放射線影響、③海洋動植物への放射線影響、3つの観点から評価を行った結果、放射線影響は十分小さいことが今回示されましたが、規制基準を満たしていたとしても、海洋環境への影響は計り知れないものがあり、安全性に対する不安が残ります。特に人への放射線影響については、海洋に放出された放射能が魚介類を通じて生体濃縮される可能性があります。全ての魚介類について、生体濃縮のリスク評価をすべきであり、そのデータの公開を求めます。

 

2.海洋放出の技術的課題について
 今回の処理方法は海水をくみ上げて汚染水を希釈し、海に放出する手法を取り入れています。汚染物質そのものが無毒化されていないため、汚染水をそのまま海洋に放出し海洋中で希釈されたことになります。莫大な処理費用がかかる方法を採用した明確な理由を開示してください。
また、処理にかかる費用(漁業者や近隣生活者への補償も含めて)の総額とその費用を誰が負担するのかを明確にし、国民の税金や電気料金として負担するのであれば、負担金額を開示すべきです。

 

3.特定した放射性核種すべてを測定・評価の対象とし、結果データを公表すべきです。
 「東京電力は、国内における廃止措置や埋設施設に関する知見を踏まえてALPS処理水を海洋放出する際に放射性核種を特定した上で、測定・評価の対象とする放射性核種を選定する方針としており、規制委員会は、この結果をALPS処理水の海洋放出が開始されるまでに別途確認する。」としていますが、測定・評価の対象とする放射性核種を選定するのではなく、特定した放射性核種すべてに対して測定・評価を行ったうえで、結果データを公表することを希望します。

 

4.トリチウムの除去技術についての実用化を求めます。
福島第一原発には、ALPS浄化装置で除去できないトリチウム水が100万トン以上保管されています。東京電力ホールディングス株式会社では、トリチウム分離技術について、国内外から実用技術の公募を行っていますが、実用化の実現に向け、一刻も早い対応を望みます。

以 上

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