「私たちを取り巻く日本国内の貧困の現実」を開催

 6月6日(月)ぱる★てらすを会場に、貧困問題学習会を開きました。

 

 講師には反貧困ネットワークの事務局長として困窮者支援の現場で活動を続けている瀬戸大作さんをお招きし、私たちを取り巻く貧困の現実についてお話をしていただきました。

 

 反貧困ネットワークは、貧困格差問題に取組む市民団体、NPO、労働組合によって結成され、仕事を失うなどして生活が困難になった人たちや、貧困や迫害から逃れて日本に暮らす外国籍の人たちへの相談支援活動をしてきました。ネットカフェで寝泊まりする人や住込み派遣など住宅喪失者には、緊急な避難場所としてシェルターを提供するなど、アパート取得まで継続的な支援もしています。
 コロナ禍が始まって3年経った今も困窮者は増え続け、貧困の現実は深刻の度を増しているそうです。
 相談に来る年齢層は幅広く、20代から40代の若い人たち、とりわけ女性が目立つようになりました。これは小泉規制改革によって年々パートやアルバイト、派遣等の非正規雇用が拡大したことが大きな原因です。最低な賃金で働かされ不要となれば使い捨てにされる若者には、意思があっても働く場がない。貯蓄ゼロ世帯の割合は、20代では60%にも上ります。非正規雇用率も4割近く、若い世代では半数に近くなっています。こうした人たちは、何らかの理由で職を失い収入がなくなれば、一挙に住まいも失うことになるのです。住所など連絡先やスマホ等の通信手段も失って、就職活動も困難になるのです。安心して休息の取れる生活の拠点である「住まいは人権」です。
 最後のセーフティーネットと言われる生活保護は、使いづらくて真に困窮者支援の制度になっていません。福祉の相談申請窓口では、「若いから働け」「実家に行けば」等の追い払いや劣悪な施設への入所の無理強い(悪質貧困ビジネスの餌食にされる)、家族への扶養照会等の役所の対応が、福祉に繋がる大きな壁になっています。住まいを得るにも、家を借りる初期費用(生活保護を受給すれば一時金が支給される)が貯まらない、低収入でも賃借できる物件がない、保証人や連絡先のなり手を探すのも大変で高いハードルになっています。心の支えであるペットを飼うことを理由に頭ごなしに保護を断られた人、在日のコリアンが外国人登録証のない役所に申請をして「故国の家族に面倒を見てもらえ」だの「借金があるからダメ」などとんでもない扱いを受けたことなど、人権無視の事例に事欠きません。
社会で精神的にボロボロにされた相談者の急増、精神的困難を抱えてメンタルな病気になった若い人が多いのが特徴になっていると言います。経済的に追い詰められることは、病気や死と直結してしているのです。
不安定雇用を前提とする社会の問題が、コロナ禍がきっかけになって一挙に噴き出したものだと指摘しています。
 昨今の電気や食料品の値上げが貧困層をさらに追い詰めています。要支援者が増える中で、支援団体では寄付が減り、食料品は高騰するとあって支援物資確保が難しくなっています。もはや個人やNPO法人でできる支援はもう限界。みんなで支え合う仕組みづくりが必要だと次のように訴えています。
福祉事務所職員とも連携を大切にする。「生協ともコラボしたい。いいタイミングで学習会に呼んでもらった」とおっしゃいました。「希望は協同と連帯」という計画のタイトルのとおり、新しい支援の在り方等を検討しているそうです。
 瀬戸さんとともに参加した在日16年になるロヒンギャの青年は、3度も難民認定申請を出しても認められず、仮放免になっても働くことは禁止、医療も受けられないという中で、再収監や強制帰国を怖れながら暮らしていると語りました。あまりの過酷な現実に息をのみ、日本の入管政策は人道に反すると思いました。何人もの外国人が、生活保護法が適用されずに暮らしている現実も忘れてはならないと思いました。

 

 参加者は主催者側を含め25名。瀬戸さんの熱意と困窮者の現状に大いに心を動かされました。会場で実施したアンケートでは、参加してよかった、貧困問題が少しでも分かった、ショックを受けたなどの感想を始め、「今の政治はふがいない」との声も。さらに「ひとりでも多くの人に伝えていきたい」「生協として何ができるか考えていきたい」「パルシステムとして何ができるか注目していきたい」など前向きな意見もいただきました。
 参加された皆さま、ありがとうございました。

 

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