「コロナ禍が影響を与えた日本の貧困問題」を開催

 2021年6月7日(月)ぱる★てらすに「反貧困ネットワーク」事務局長瀬戸大作さんをお迎えして「コロナ禍が影響を与えた日本の貧困」と題した講演会を開催しました。

 

 

 

 瀬戸さんのお話の前半、まず「社会の底が抜けている」という言葉に驚きました。「社会の底辺(の人々)」という言葉は聞いていても「抜けている」というのは、もう救うに救えない状況ということと理解しました。瀬戸さんへの直接の電話も以前の「助けてください」から、今は「死にたい」か「死ねなかった」というSOSに変わってきていると。

 

 

 2008年~2009年頃の生活困窮者は40代~60代が多く「年越し派遣村」で対応が何とかできていた。2020年からは相談者の8割が20代で所持金が1,000円以下。このような状況でなぜ社会に対して「助けて」と言えないのか。それは社会から孤立していることもあるが、根源に「福祉が人を殺す」状況があると瀬戸さんは言います。福祉事務所に行っても「水際作戦」による追い返しがあり、助けてくれない。挙句自殺の道を選択してしまう方もいる。ようやく【生活保護】申請が通っても、住宅のあっせんはしてくれない。日本人に対してもこのような対応なので、難民と言われる人を含む外国籍の人々に対してはさらに過酷な状況です。難民認定されないと医療が受けられない。また、オーバーステイで入国管理局に収容され【仮放免】で外に出られても、働くことは禁止、移動も一定の範囲内のみ。仮放免を認めてもらうにも【保証人】や【保証金】が必要です。
 困窮者をターゲットに【無料定額宿泊所】での搾取も横行していると聞きました。本来は生活困窮者のための施設であるにも関わらず。まさに「福祉が食い物にされている」のです。スリランカからの男性は腰を痛め通院しなければならないが、保険が無いため医療費負担が大きいのでなかなか通院は難しいとのこと。ガーナからの女性は夫が仮放免中。仕事もしてはいけないので、自分が生きていく価値も見いだせずに落ち込んでいるとのこと。

 お話をうかがっている最中思わず、これは「生存権」(憲法25条)の問題ではと感じました。働くことを制限するのではなく、むしろ日本人と同じように働いて、お給料から税金、健康保険税を払って生活していくという仕組みにはならないのでしょうか。参加者のお一人から「〇〇駅付近に3人ほどホームレスの方を見かけていて、お一人にお弁当や食べ物を差し上げています。公的な援助を受けられるようにお手伝いしたいのですが、本人がそれを固辞している。どうしたら良いでしょうか。」という趣旨の質問がありました。瀬戸さんから「ありがとうございます。そういう方に無理言ってしまうと心を開いていただけなくなることもあるので、無理はしないように。どうしてもの時は電話ください。」との言葉がありました。
 2019年までの講演の場合、登壇は瀬戸さんお一人でしたが、今回は瀬戸さん曰く「埼玉特別バージョン」というサプライズでした。関係者にもまったく知らされていませんでしたが、この「埼玉特別バージョン」の、当事者特に外国籍の方のお話はメディアで見聞きしていること以上に重く、そして有意義なお話だったと感じました。お話を聞く機会はあっても、普段、私自身はこのような方たちに具体的な助けになることをしているのだろうかという反省とともに。お話の最後にガーナの方がおっしゃった「日本人は悪くない」という一言に少し救われた思いがしました。

 この「反貧困ネットワーク」は寄付金のみで運営しています。今のままでは、運営資金はあと1~2年で枯渇するのでは…ともうかがいました。一人一人の力では限界があるというのはすでに言われていること。私たちに何ができるか、まずは生協の中で活動してきたことをさらに広げていく必要があると実感しました。瀬戸さんは「今日は生協でお話させていただいているので、生協として何ができるか考えてください。みなさんへの宿題です。」とおっしゃっていました。
 パルシステム埼玉は2030年ビジョンでSDGs達成に貢献しますと明言しています。誰一人取り残さない社会へ向けた具体的政策の一つとして、パルの組合員が継続して募金しやすい仕組みを構築することも考えていただきたい。

 

 

 

 ご参加のみなさま、お話しくださったみなさま、フードドライブにもご協力くださった方々、この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。
 次回のピースインターTG企画にもどうぞ足をお運びください。お待ちしております。

 

 

 【次回開催予定】9月6日(月) ぱる★てらす にて 「水道民営化について(仮称)」

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