「沖縄スパイ戦史」上映会を開催

 平和国際委員会では、2022年12月14日、沖縄の本土復帰50年の節目の年に沖縄戦を学ぶことを趣旨にして、映画「沖縄スパイ戦史」上映会を開催しました。会場はレイボックホール(さいたま市民会館おおみや)小ホールでした。

 この映画は、二人の女性監督(三上智恵さん、大矢英代さん)が、渾身の力を込めて制作したドキュメンタリーです。

 

 第二次大戦末期に地上戦になった沖縄島の北部では、日本軍中野学校出身の将校が10代半ばの少年たちを言葉巧みに集めて護郷隊という少年兵部隊を組織し、アメリカ軍にゲリラ戦を仕掛け、戦車に体当たりの爆弾攻撃をしたり、動向を偵察するなどの抵抗を続けていました。1日でも長く敵を沖縄に引き付けておくためのもので、少年たちには投降することも、家に帰ることも許されませんでした。
 三上監督は、生き残ったおじいさんや遺族のもとに足繁く通っては証言を聞き取るとともに、研究者の協力を得て関連の文書から情報を集め、戦後も長い間秘密にされてきた護郷隊の実態を明らかにしていきました。戦争に翻弄された人たちや将官として作戦を主導した人達にも、終戦後から現在までの人生を取材しました。生き残った元少年兵と戦死した少年兵の弟との、元将官と少年兵との交流など、あたたかな視線で丁寧に追っていきます。

 象徴的なのは桜を巡る話です。元将官が少年兵の慰霊のために送ったソメイヨシノは沖縄の土に合わず根付くことはなくても、元少年兵が戦死した仲間を想って植えた69本の寒緋桜は毎年濃いピンク色の花を咲かせるよう育ちました。その花の下で生き残ったおじいさんと犠牲になった少年兵の弟が、手を取り合ってわだかまりを解いていくシーンには、胸が熱くなりました。

 

 軍が住民の生活圏に入ることで、軍事機密保持のために住民監視が行われ、住民相互の監視や疑惑が深まります。スパイ嫌疑によって軍が住民を殺す事件も起こりました。また、住民が飼育する家畜を軍の食料にする目的で、作戦を口実に集落の住民全員が故郷を追われ、集団移住を強制された波照間島。大矢監督は軍隊のいない波照間島からマラリアの蔓延地帯に移住させられ、親族を次々に亡くした女性から「今指揮官がいたら絶対許さない」との言葉を聞きます。住民を守るどころか、かえって軍がいる方が危険なのでは、と考えさせられます。

 このドキュメンタリーは一貫して住民に寄り添いつつも、単に日本軍や戦争を非難するだけでなく、大切なのは人間であり住民の生活なのだというあたたかな目線は感動的です。最後まで目が離せない映画でした。
 コロナ感染症対策等を考慮し、午前午後の2回上映としました。施設の入り口や会場の位置が分かりづらく、使いづらい面もありましたが、音響設備もよく新しいスクリーンということもあって、映画鑑賞にはいい環境で実施することができました。


 参加されたみなさま、熱いアンケートをたくさん記入してくだったみなさま、どうもありがとうございました。
映画「沖縄スパイ戦史」の中でインタビューに答えてくださった体験者の方たちや解説をしてくださった学者、研究者の方がたの言葉と沖縄戦で起きたことを忘れずに、これからも地道に非戦の道を考えていきたいと思います。

【次回開催予告】3月16日(木) ぱる★てらすにて「自主避難者の声を聞く」

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